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DATE : 2007/07/21(土)

『PROMISE 無極』解説 ~関連プロダクト編

関連プロダクト

『PROMISE-無極- Visual Book』

出版社:ソフトバンククリエイティブ、価格:2079円
http://www.sbcr.jp/
#インタビューや撮影裏話などを日本語で読める貴重な資料。日本のみの発売。
#ただ、リウ・イェ関連のページは少ないので、ファンには少し物足りない感じも。。。

『PROMISE-無極-』(SB文庫~ノベライズ~)

著者:中本智子、出版社:ソフトバンククリエイティブ、価格:630円
http://www.sbcr.jp/
#映画本編では未公開となってしまったシーンや裏設定もあり、映画を理解するためには必読。
#ただし、あくまでも日本のノベライズ本であり、郭敬明著の小説版『無極』の完訳ではない。

『無極 正子公也デザイン画集 The Promise : Kimiya Masago Art & Design Works』

出版社:キネマ旬報社、価格:3400円
A4判オールカラー120ページ、函入りポスター6点付き
http://www.kinejun.com/
#衣装制作時のエピソードなども豊富にあり、「画集」と言いながらも読み応えのある一冊。

『無極』(小説)

著者:郭敬明(グオ・ジンミン)、出版社:人民文学出版社、言語:簡体字、価格:約2000円弱
http://book.sina.com.cn/nzt/ent/wuji/index.shtml
#繁体字版、及び韓国語版も有り
#繁体字版の小説には、スチール写真や郭敬明氏の写真が掲載。
#簡体字版は横書き(+全頁イラスト入り)、繁体字版は縦書き。

『一望無極』(映画製作の背景を語った本)

著者:陳紅、出版社:人民文学出版社、言語、簡体字、価格:約1500円
http://book.sina.com.cn/nzt/ent/yiwangwuji/index.shtml
#フルカラー本。
#『無極』制作手記、インタビュー、俳優・スタッフがそれぞれ『無極』の制作などについて語った文、陳紅自身について、の4つのパートで成り立つ。
#バデルト・ファンにとっては、彼の誕生日が判明した唯一の貴重な資料。

雑誌

『CINEMA HEADLINE vol.012』

劇場などで無料配布していたもの
#『TOKYO HEADLINE』の増刊である『CINEMA HEADLINE』による紹介。登場人物紹介、ストーリー紹介、衣装を手掛けた正子公也のインタビュー記事、北京ワールドプレミアのエピソードなど、その記事は有料の映画雑誌以上の内容。
http://tokyoheadline.com/
『PROMISE 無極』記者会見記事
http://tokyoheadline.com/vol240/show01.html

『SCREEN 2006年3月号』

近代映画社、780円
作品紹介、チャン・ドンゴンのインタビューなど。
http://www.kindaieigasha.co.jp/

『くびったけっ!!韓国シネマ5』

TOKIMEKIパブリッシング、1260円
作品紹介など。
http://www.tokimeki-p.com/

『キネマ旬報 2006年2月上旬号 No.1448号』

キネマ旬報社、820円
#4Pの特集記事。アジアを舞台としたファンタジーの初の映像化という点やここの俳優についての評価はあるものの、全体のストーリーの評価としては、論理性に欠く、とあまり評価はよくない。
http://www.kinejun.com/

論文

『人造美女は可能か?』

編者:巽孝之・荻野アンナ、出版社:慶応義塾大学出版会、価格:2,500円
#「人造美女」をテーマに、文学作品(主に19世紀以降)からサブカルチャー(アニメ、オタク文化etc)にわたって論じた本。
#「ゲイシャとT・レックス」(小谷真理著)という章で、『PROMISE 無極』のシナリオを、「東洋における究極の人造美女のマニュアル」(P.227)として論じている。

DATE : 2007/07/21(土)

『PROMISE 無極』解説 ~映画祭編

オポルト国際映画祭 2007
オリエント・エクスプレス公式コンペティション部門特別賞 受賞

第63回ゴールデン・グローブ賞
外国語映画賞 ノミネート

第25回香港電影金像奨
撮影賞:ピーター・パウ
美術指導賞:ティン・イップ
衣装デザイン賞:ティン・イップ・正子公也
音響効果賞:王丹成(ワン・ダンロン)、Roger Savage
視聴覚効果賞:鍾志行(フランキー・チェン)、馬永安(ドン・マー)、鄭文政(セシル・チェン)、譚啓昆(タム・カイクワン)
※ 全てノミネート(ピーター・パウは『パーハップス・ラブ』で受賞)

第7回ゴールデン・トレーラー賞
外国語ロマンス・トレーラー賞 ノミネート

第56回ベルリン国際映画祭
非コンペティション部門 出品

第8回ドーヴィル・アジア映画祭¥nオープニング作品として上映

第58回カンヌ映画祭
予告編初上映

第78回アカデミー賞
外国語映画賞部門 中国出品作品として選出される
#残念ながらノミネートはならず。

SoundtrackNetによる「The Best of 2006」(サントラ)
佳作:クラウス・バデルト
#SoundtrackNetはバデルトの最高傑作と言われる『PROMISE 無極』を「民族楽器とエスニック的な曲調による壮大なスコアは、まだ聴いていないのなら聴くだけの価値がある」と評価している。

DATE : 2007/07/21(土)

『PROMISE 無極』解説 ~世界の『PROMISE 無極』編

作品解説のため、ネタばれがあります!!

各国の『PROMISE 無極』、その内容の違い

ここでは、ヨーロッパ(ドイツ・フランス)版とアジア(大陸・香港・日本)版のエンディングまでの内容の違いを紹介します。

ヨーロッパ版では、冒頭の物語の時代背景、人物紹介において、正子公也のイラストの映像と共に、ナレーションでこれらが語られます。
#エンディングも異なりますが、これについては別途解説してるので、そちらをご参照下さい。

そして、アジア版がノーカット(124分)に対し、ヨーロッパ版はカット版(98分)。そのカットされたシーンは以下の通り。

・馬蹄谷の戦いで、昆崙が走るシーンが、部分的にカットされている
#野牛が来ても、直ぐに走り出さないで、様子を見るシーンが無く、独眼に「昆崙!」と呼ばれて走ってきた(独眼を助けに来た)感じになっている(→アジア版では、独眼は昆崙を呼んでいない)

・馬蹄谷の戦いで、蛮族と光明の軍とが戦うシーンが、部分的にカットされている
#光明のアクションがかなりカットされている。日本人には痛し。

・昆崙を光明が奴隷にするシーンの後半(光明の後に続いて昆崙が走って追いかけるシーン)がカットされている

・芭蕉の林で、満神と光明とのやり取りがない
#故に、その後、“賭け”に関する全てのシーンがない

・服を脱いだ傾城に対し、無歓の金指棒による賞賛がない

・王に剣を向けられ、屋根から落ちる傾城を昆崙が救うシーンで、傾城が青い空を背景に落ちるシーンがない

・滝に昆崙と傾城を追い詰めた無歓の登場シーン(→部下が椅子を作り、そこに無歓が座る)がカットされている

・無歓と傾城の鳥かごでのやり取りが省略されている。
#無歓の「ようこそ、ようこそ」→「着ろ」のせりふだけ。。。

・王殺しの罪のため、海棠の古木に吊るされた光明。ここで、初めて満神と会うことになっている。また、「海棠の花が散り、月と太陽が同時に現れる時、傾城と華鎧の主(=すなわち、昆崙)が巡り会う」という予言が無い。
#光明は華鎧の主ではなくなったこと、新しい華鎧の主が現れ、傾城に愛されることを告げるが、初めて会ったことになっているので“賭け”の話は勿論無い。

・無歓に捕らえられた傾城を、昆崙が助けるシーンで、傾城の飛行時間が短い。

・海棠精舎にて、傾城が光明の華鎧の仮面を上げるのに一度失敗するシーン、光明が傾城に無理やりキスをするシーン、昆崙が布団を敷くシーンがない。
#その為、布団を敷くシーンで流れる音楽「Love Theme / 愛的主題」がシフトし、海棠精舎に着いたときから流れはじめる

・その翌日、去る傾城に対し、光明が首を切れと昆崙に命令するシーンがない
#その為、傾城が昆崙に対し、「貴方は自分の意志で決められる」と語るシーンがない(←複線が消えた)

・昆崙が鬼狼に連れられて、雪国へ行ったとき、雪国の全体像を写すシーンがない
#その為、音楽の盛り上がりに欠ける…。

・雪国からの帰り(?)で昆崙と鬼狼の別れの時、昆崙の「服を有難う」の後に、鬼狼の「行け、そしてお前の望みを見つけろ!俺はお前の傍にいる」というせりふがある。
#次の傾城を待ちわびる光明のシーンが無いため、そこで流れる「The Promise / 承諾」(トラック9の前半)の曲がここにシフトして流れる

・傾城を待ちわびる光明の様子が無い。「海棠の花が散り(以下略)」という予言が無いため、海棠の花を散らないように木を保護することもなければ、焦っている様子も無い。また、戻ってきた昆崙が速さについて語ることも無く、そのまま光明を傾城の元へ連れて行く。
#趣が無い!

・光明を傾城の元へ連れて行く昆崙の走るシーンが、部分的にカットされている

・傾城に追いついた光明。「月と太陽が同時に現れる時(以下略)」の予言、及び傾城の首を切れ!の一件が無いため、昆崙の存在特になし。。。

・也力が無歓を捕らえたと海棠精舎に来た時のやり取りが、部分的にカットされている
#金指棒を受け取っていないなど

・鬼狼が無歓に黒衣を返すシーンが、部分的にカットされている
#特に、鬼狼が昆崙に抱きつき、別れを惜しむ名シーンがなくなっているのは、ある種のファンには痛い…カモ

・光明、昆崙、傾城が無歓に捕らえられた最後のシーンで、無歓の黒衣を光明に着せるという長年の夢が叶いそうな時に、無歓がひと粒の涙を流さない
#この後、「黒衣をくれ(=黒衣を着る)」という光明を信じ、無歓は光明の縄を解く。この『PROMISE 無極』の中で流される“ひと粒の涙”は、その人物の心の中に何らかの変化が起こった時に流れるもの(各人の心の変化を表すもの)と解釈ができる。その為、このシーンの“ひと粒の涙”は「それまで人を信じなかった無歓が、光明を信じ、拘束を解く」という無歓の心の変化を表しているように読み取ることが出来るのだが…。“一粒の涙”が無いと、人を疑って止まない無歓が、光明を信じた心の変化を読み取りにくい(→他の人物との描き方が変わる)。

DATE : 2007/07/21(土)

『PROMISE 無極』解説 ~サントラ的?作品解説編

作品解説のため、ネタばれがあります!!

『PROMISE 無極』は昆崙の成長物語?

あくまでもサントラから物語を解釈すると、『PROMISE 無極』では「昆崙の成長」というものが見えてきます。『PROMISE 無極』のサントラでは、4人のメインキャラクターそれぞれにテーマ曲があるのですが、このうち、昆崙のテーマ(トラック4「Kunlun, the Slave / 崑崙奴」)が映画の物語と特に密接に関わってきます。
昆崙が奴隷から一人の人間として成長していく過程において、その時流れている音楽の一部に、昆崙のテーマ曲が挿入されています。
それは、映画では語られない登場人物たちの背景部分を音楽で表現しようとしているクラウス・バデルトの音楽ならではと言えるかもしれません。
#因みに、『PROMISE 無極』の中で、バデルトのお気に入りキャラは、昆崙。何も無いところから成長していくところが、その理由とか。

具体的には以下のシーン。

・馬蹄谷での戦いにおいて、独眼(昆崙の奴隷主)を背負って這って走る昆崙が、立ち上がるシーン。
このシーンでは、昆崙が奴隷(→立つことが許されない存在)から、自らの意思(→奴隷は意思を持つことが出来ない)で人間(→立つことができる存在)になったことを意味している。

・王を殺害し、傾城を馬に乗せて王宮から脱出するシーン。
「王を救え」という光明の命令に反し、自らの意思(判断)で傾城を救った。自分の意思を昆崙が持つようになったことの表れと言える。

・傾城の帰りを待つ光明を傾城の元へ連れて行ってあげるシーン。
誰に命令されたわけでもなく、自分が“してあげたい”と思って、光明を連れて行ってあげている。すなわち、自分の望みを昆崙が持つようになったことを示している。
#最終的に、この「自分の望み」が、「傾城が(光明と)幸せになってくれれば…」から、「傾城に本当のことを話す(告白する)」→「傾城を運命から開放する」と発展していき、エンディングを迎える。

ここが聴き所、音楽に注目!

「昆崙の成長物語」の他にも、音楽も念頭に入れて干渉すると楽しめるシーンを抜粋。
#尤も、全てのシーンにおいて、音楽は注目すべき!全てに意味有り。

・傾城が運命の選択をした瞬間~タイトル画面。
音楽が一気に重くなり、これからの運命を暗示するかのよう。しかし、後半から盛り上がる音楽は、これから始まる壮大な物語を導く。

・馬蹄谷にて、蛮族の群の中に光明の軍が乗り込み、戦うシーン。
戦う兵の動きと音楽と一体化。特に、光明が流星錘を振り回しているシーンは、まるでワルツを踊っているかのよう。
#ヨーロッパ版では、戦いのシーンが部分部分でカットされているため、なんとなくワンテンポずれて踊っているようで、何ともノリが悪い。

・怪我をした光明が、昆崙に王を救うように頼むシーン。
光明が昆崙に話を持ちかけたとき、重い曲調から曲が始まる。まるで、「華鎧を着けた者が王を殺す」という“無極”の運命を暗示しているかのよう。
因みに、ここで流れる曲は、「Save the King / 救主」(トラック12)。その後、昆崙が宮殿に向かってくる時からの音楽は、「Saving a Princess / 救妃」(トラック14)。

・無歓に捕らえられた傾城を、昆崙が助けるシーン。
自由で開放されたような感じを与えてくれる「Princess Kite / 風箏王妃」(トラック8)を存分に見て聞いて楽しめる。因みに、このシーンは後の展開的にも重要。
#映画未見のときに「Princess Kite / 風箏王妃」を聴いたときでも、その「自由」のイメージを与えてくれる曲の雰囲気から、この曲だけは(スチール写真で観ていた)傾城が飛行するシーンに使われるのだな…と感じ取ることが出来た。。。

・エンドロール
映画の結末はここにあり。

ここがポイント!『PROMISE 無極』の伏線・暗示・象徴

この映画には、多数の伏線や暗示・象徴が隠されています。その一部を紹介します。
#劇中最も使用されている「鳥」の象徴については、『PROMISE 無極』のプログラムを参照のこと。

・昆崙に負傷した自分に代わり、王を助けるように頼んだ光明。昆崙に王はどのような人かを聞かれ、光明は「武器を持たない人」と答える。しかし、昆崙が王宮に着いたとき、武器を持っていなかった人物は、傾城だけであった。

・無歓の鳥かご状の檻の中から傾城を助け出す昆崙。これは、“無極”の定めのために、無歓によって真実の愛を奪われる傾城と、傾城を“無極”の定めから開放させる昆崙を示す寓意。

・光明が部下に騙され王宮にやってきた場面で、首を吊る無歓。これは、冒頭で幼い傾城に騙された少年(→はじめは首を吊っていた)が、無歓であることを意味する複線。
#“嘘の首吊り”のトリックも同じ

・無歓に捕らえられ吊るされる光明に、黒衣を着させよう(=奴隷にさせよう)とする無歓。「黒衣をくれ(=奴隷になる)」という光明を信じ、吊るしていた紐を切るが、光明(←実は黒衣を着る風に偽り、反撃のチャンスを狙っていた)に騙され、反撃される。
この構図は、冒頭で「奴隷になる」と言った吊るされた傾城を信じ、開放してあげたのに、騙され反撃されたシーンを想起させる。結局、無歓は劇中において、2回だけ人を信じているが、全て裏切られて(反撃されて?)いることになる。無歓もまた、「人を信じても裏切られる」という“無極”の運命の中にいたのかもしれない(→そのはじまりが、傾城)。
#傾城が過去に戻って、饅頭事件からやり直せば、傾城、昆崙、光明、無歓(そして、鬼狼も)は、もっとよい運命をおれて、ハッピーエンドになるのかもしれない(→推測でしかないが、それがこの映画の結末なのかも)。

DATE : 2007/07/21(土)

『PROMISE 無極』解説 ~饅頭編

作品解説のため、ネタばれがあります!!

饅頭1個の恨み?

先ほどから、「饅頭の恨み」と書いていますが、本当に無歓は饅頭1個のために、傾城を追いかけていたのでしょうか。『PROMISE 無極』は、表面的にみると、無歓が饅頭1個盗まれた恨みのために、傾城を追い詰めている映画にも見えますが。
ここは、少年期に受けた精神的ショックと解釈した方がよさそうです。

少年無歓は、実に素直な子供だったと言えるでしょう。
いくら戦乱の世とはいえ、死体がごろごろしているところで、独り見張りをしていることは、子供にとってはそれなりの勇気がいるはず。
また、死体の見張りをしているのも、死者のもの(=「死者は父親の兵隊=死者のものは父親のもの=父のものは自分のもの」とは言っていますが、子供なりの「人のものを盗むな」という説教の仕方とも取れる)が盗まれないようにするためであることからして、(父親から頼まれたにせよ、自分から率先してやっていることにせよ、)正義感のある少年と見ることも可能です。
また、無歓なりの“見張り方”をしていることからしても、この仕事をきちんとやり遂げようとする姿勢も見受けられます(特に、もしこれが父親から頼まれたことであったら、より張り切っているに違いない)。

そんな正義感に燃える少年無歓は、捕らえた盗人である少女傾城(→ノベライズから推測すると、どうやら傾城は盗みの常習犯だったようで、無歓はずっと目をつけていたらしい)に向かって、開放して欲しければ奴隷になるように言います。
このシーンだけを見ると、少年時代から“嫌なやつ”のような感じもするが、時代は戦乱の世。この「奴隷になれ」と言うやり取りは、大人(父親をはじめとする偉い人物ら?)たちの言動を単に真似ただけのようにも思えます。
なぜなら、奴隷になることを承諾した盗人が、「兜がきれいね、触らせて」と言うなり、何の疑いも無く、自分の兜を指した下のだから。実に素直な少年と言えます。
少しでも疑うこをを知っていれば(本気で奴隷にするつもりなら)、自分のものを盗んだ人間(=まだ信用できるという保証はない)に対して、(ただでも戦乱の世と言うのに、)安易に自分の身を守っている兜など渡さないはずです。
それを、敵かもしれない少女に手渡してあげるのですから、少年無歓は今まで騙されたり、裏切られたりという経験をしたことが無かった(=父親が位の高い人物だったため、ずっと守られてきたのかもしれない)と想像することは可能です。
それだけに、少女傾城の仕打ちは、少年時代の無歓の心に大きなショックを与えてしまい、人間不信に陥ったのではないか(→そして、自分に衝撃を与えた傾城に仕返しをしてやると決意したのではないか)と思われます。

DATE : 2007/07/21(土)

『PROMISE 無極』解説 ~物語の結末編

作品解説のため、ネタばれがあります!!

"もう1つのエンディング"

韓国版、アメリカ版はまだ未見なので、何ともいえないのですが、現在確認したところでは、エンディングは3種類(日本版を含めて)あります。
しかし、「もう1つのエンディング」と言うと結末が違うのかと思わせる感じが、実際にはストーリーは同じで、単に映像のみ異なります。

エンディングの分岐点は昆崙が傾城を抱きかかえ、時空の壁を越えるシーン。

大陸・香港版エンディング

#日本で「もう1つのエンディング」と呼ばれているもの。このエンディングがオリジナル。

大陸・香港版では、その後二人は、ピンクとエメラルド色(?)とに輝く空間(ノベライズでは「虹色の光が交錯する彼方」)を飛行。(このシーンのスチール写真は「Visual BooK」P45右下、或いはノベライズ巻頭の写真より最終ページ下。)
音楽の終わるあたりで、映画冒頭に登場した、花が散り行く海棠の木のシーンが入る。そして、エンドロールへ。
因みに、大陸版と香港版にも実は差異があり、大陸版(日本版、ヨーロッパ版)のエンドロールは簡体字、香港版のエンドロールは繁体字となっている。

日本版エンディング

日本版は、飛行シーンをカット。冒頭の海棠の木のシーンを次につなげ、さらにタイトル直前の幼い傾城が水面を歩くシーンへとつなげてエンドロールへ。

ヨーロッパ版エンディング

ヨーロッパ版(ドイツ・フランス版)では、日本版の映像を使いながら、満神のせりふが入る。
せりふの内容は、昆崙のせりふを一部カットし、カットされた昆崙のせりふを満神が喋るというもの。
大陸・香港版、及び日本版では、昆崙が「もう一度運命を選ばせてあげる」、「運命は変えられる。時には時間が逆に流れ…(以下省略)」と言うところを、ヨーロッパ版では、「もう一度運命を選ばせてあげる」で昆崙のせりふが終わる。
代わりに、満神が「傾城、運命は変えることは出来る。時には時間が逆に流れ…(以下略)」と昆崙のせりふを言い、最後に「今度は自分の手で運命を変えなさい。選択のチャンスをもう一度あげるわ。貴方にとって好いほうの運命を選びなさい。」と付け加えてエンドロールへ。
#日本でのDVD発売が決まった当初、現在DVDに収録されている「もう1つのエンディング」の他に、結末を判りやすくしたバージョンも収録されると言う情報がありましたが、恐らくそれは、ヨーロッパ版エンディングだったのではないかと思います。

3つのエンディング、それぞれが意味するもの

過去へ戻った幼い傾城は、一体どんな選択をしたのか。
『PROMISE 無極』の解説でも述べましたが、この映画のラストは、クラウス・バデルトの音楽が語っています。
エンドロールのはじめに流れるヴォーカル曲のタイトルは、「Freedom of the Wa」。これではよくわかりませんが、中国語タイトルでは「女娃的自由」(英語タイトルの「Wa」は、おそらく「娃」のピンインなのでしょう)。
これを日本語に直すと、「少女の自由」。つまり、少女=幼い傾城の自由。そして、「自由」があるということは、彼女の運命から解き放たれたということになります。
したがって、ラストシーンで過去に戻った傾城は、満神から告げられた“無極”の運命を望まなかった(=真実の愛と引き換えに、寵愛と不自由ない生活を得ることを選ばなかった)ことが分かるのです。
#因みに、この「女娃的自由」の歌は、クラウス・バデルトが『PROMISE 無極』の曲作りのため雲南省を訪れたときに、雲南省の人たちがプレゼントしてくれた地元雲南の古い歌だそうです。
#監督と共に非常に気に入ったため、劇中に使用したかったのだけど、使用できるシーンが無かったため、エンディングに採用されたとのこと。

さて、これを踏まえたうえで考察すると、日本版、ヨーロッパ版では、幼い傾城が水面を歩くシーンを入れたことにより、過去へと戻れた傾城が運命の選択を行ったことまでを表現したエンディングといえます。
特にヨーロッパ版では、わざわざ満神のせりふを入れて、再び運命の選択をさせていること、傾城にとって望ましい方の運命を選ぶこと(=この時の傾城は、“無極”の運命を選択したことによるその後を知っている状態であり、運命をやり直すために過去へ戻ったのだから、再び“無極”の運命を選択することはないとこは明白)を明確化しています。
つまり、日本版・ヨーロッパ版の方が、観客に映画の結末を理解しやすいように作られていると言えるでしょう。

しかし、映画本来の意図からすると、大陸・香港版のエンディングの方が、物語の結末をきちんと語っていると言えます。
なぜなら、この物語における“無極”の運命は、映画の冒頭、傾城が死者の饅頭を手にした瞬間から始まっているからです。例え、満神との運命の選択で、提示された運命を望まなかったとしても、無歓との饅頭な関係は、選択の前に行われたことなので、この饅頭事件からも傾城が開放されなければ、真に“無極”の運命から解き放たれ自由になったとは言えません。傾城は再び、饅頭1個のために(笑)、無歓に追いかけられることでしょう。
本当に全ての運命から自由になるため(=運命をやり直すため)には、傾城が死者の饅頭を手にする前(=すなわち、それは映画の冒頭)に戻らなくてはなりません(=饅頭を手にした後では、無歓に出会ってしまいます。この場合、無歓に饅頭1個の恨み(笑)で追いかけられないようにするためには、無歓の奴隷になる他にありません。が、傾城は満神との会話の中で、奴隷になりたくない意思を伝えているので、この選択をすることはないと思われます。つまり、無歓を騙すことしか選択できないわけです。)。
従って、「無歓との饅頭な関係をやり直せたのだろう(=真の意味で、傾城は自由になった)」と観客に想像を与えてくれるのは、花が散り行く海棠の木のシーンで終わる大陸・香港版だけになります。

DATE : 2007/07/21(土)

『PROMISE 無極』解説 TOP

日曜洋画劇場で、『PROMISE 無極』が地上波初放映ということで、今週は急遽『PROMISE 無極』祭を開催しておりました(ヲイ)。。。
#と言うか、地上波放送早すぎ(苦笑)。勿論、嬉しいに越したことはないのですが、もう一年くらいはかかるだろうと思っていた。まだ、韓国版とアメリカ版、見てないのに~(泣)。
#しかし、金かけた大作系の映画で、1年もせずにテレビで放送される映画って、何故か失敗作や駄作のイメージが大きいのだが。まぁ、確かに『PROMISE 無極』は、日本の映画評論家ですら「失敗作」としか観ていない映画ではありますが(「キネ旬」の特集は笑えた)。。。

…と言うわけで、今回は『PROMISE 無極』を総復習(?)しちゃいます。

基本情報

各国公式サイト・予告編、クラウス・バデルト(音楽)紹介記事へのリンク

クラウス・バデルトの『PROMISE 無極』関連のインタビュー記事、サントラ情報へのリンク

ネタばれ有りの『PROMISE 無極』の解説

作品解説

『PROMISE 無極』解説 ~物語の結末編

『PROMISE 無極』解説 ~饅頭編

『PROMISE 無極』解説 ~サントラ的?作品解説編

『PROMISE 無極』解説 ~世界の『PROMISE 無極』編

作品情報・関連プロダクト

『PROMISE 無極』解説 ~映画祭編

『PROMISE 無極』解説 ~関連プロダクト編

DATE : 2005/04/17(日)

どこに価値観を見出すのか・・・「価値観の違い」

昨日、『コンスタンティン』のジャパン・プレミア関係の記事はないかと、ネットを探索。
いくつか良いページも見つけたのですが、書かれている記事(個人、企業問わず)を見ると、明らかに僕のレポートと書いてあることが違います・・・。と、言うか、観点の違い。

桜井の場合、俳優が何してた(しゃべってた)かより、明らかに関心は、そのまわりで何が起きていたのか!
厳密に言うと、何の曲が使われていたのか・・・。仏のプレミア映像でも、まず捜し求めたのは、「背後で何の曲が流れているか」でしたからねぇ~。
こんなレポートを書いてあるサイトさんがあったら、是非ともお友達になりたいものです。

結局、映画の何に価値を置いているかと言えば、「音楽」ですからね・・・。ちなみに、ここまでサントラ道を進む前は、「特撮技術」でした・・・。まぁ、今でも関心はありますが、ほとんどCGになってしまったので、ある意味つまらなくなってしまいましたからね。

そうそう、「最新情報」にも書きましたが、4月30日(土)に、テレビ朝日で『コンスタンティン』のメイキング特番をやるそうです。
音楽・;・、言及されるかなぁ・・・。30分だから無理かな・・・。
でも、『タイムライン』のDVDでは、テイラー様がちゃんとメイキングに登場していましたので、『コンスタンティン』でも淡い期待が・・・。

ちなみに、今回の『コンスタンティン』のジャパン・プレミアの入場券は、オークションで万単位で売れていたそうな。
正直なところ、僕はそんなに価値がある―つーか、そんなにしてまで欲しがる人がいるとは、露とも思ってませんでした・・・(^_^;)。
ただ、いち早く曲が聞けたらな~という具合だったので・・・。今回、先行上映は無かったですからね。
抽選の倍率、高かったんだろうなぁ~・・・。熱烈なコンポーザーファンだったから当たったのだろうか・・・?

まぁ、何はともあれ、改めて、その凄さを認識したわけです・・・。

■『コンスタンティン』ジャパン・プレミアの優良レポート
http://koukokuno-ura.cocolog-nifty.com/miho/2005/04/___faec.html
→俳優さんたちと司会者とのやり取りが、すべて翻訳されて掲載されています。僕もこのぐらい書けたらなぁ~。

■気になるオークションのお値段はこちら↓
http://www.aucfan.com/category2/sy-c2084039789-op-p2.html
→マジ、心のそこからキアヌファンで行かれなかった方、すみません・・・。

■キアヌを追うなら、このブログが宜しいかと・・・↓
http://warnerbros.at.webry.info/
→ワーナー・ブラザーズで宣伝をなさっている方のブログです。裏方(?)が見られます。

DATE : 2005/04/13(水)

行ってきました、ジャパン・プレミア!

4月12日。友人の春日さんを誘って、『コンスタンティン』ジャパン・プレミアに行ってまいりました。

早めに行っていたので、一応ミーハーとして出待ちをしてみました。
もちろん、僕が出待ちする方はローレンス監督!!
スタッフファンとしては、当たり前です(キッパリ)。

しか~し、いつまで経っても監督は見えず、結局で待ちはリタイア。当たり前です。ナマ監督よりも、僕にとっては映画で流れている音楽の方が重要なのですから(キッパリ)。

しかし、結局は監督が来るまで上映は開始されず・・・。まぁ、サントラが流れていたから許すが・・・。

そして、漸く監督が上映前に挨拶に来たときには、もちろん叫びましたよ、「ローレンス!!!」。
2階席15列目。僕の儚い叫びは、監督の前に届くことは無かったのでした・・・。

そして、僕も春日さんも戸田奈津子さんの登場に、ちょっと喜ぶ。本人だよ、本人!ハリウッドスターよりも、関心レベル高っ(苦笑)!
(ちなみに、『コンスタンティン』の翻訳は林完治さん・・・)

まぁ、そんなところですかね。

そうそう、上映が始まる前に、司会の人が、長い長いエンドタイトルの後、最後のシーンが残されているから、席を立つなと行ってました。
案の定、桜井的映画のハイライトである(笑)エンドタイトルが終わった後、映画の最後の方で生じた疑問が一気に解消されました。
この手の疑問は(ネタバレになるのでこれ以上言いませんが)、しばしばそのまま放置されて終わってしまうことが多いのですが、さすがはローレンス!!その辺の疑問へもちゃんと配慮が出来ています。

だから、お願い。エンドタイトルになって、本編が終わったからって、「ねぇ、アレどうなったの?」「アレ、ほったらかしかよ!」なんて連れの人と突っ込みあわないでください。
貴方の疑問は、すばらしい音楽の跡に、すっきりと解消されますから。

正直、ジャパン・プレミアに来ていた人たちの大半はマナーが悪かったです。エンドタイトル途中で帰ってしまう人は、まだ映画を見に行ってもしばしばいるから特に問いませんが(時間も遅かったし)、本編が終わったからっていいようにしゃべるのだけは止めてください。映画はまだ完全には終わっていませんし、第一エンドタイトルの曲を楽しみにしている人もいるのですから。

いたんだよな~、LOtRを見に行ったとき、僕の隣に。明らかに前作を見ていない人で、知らないキャラ等が出るたび、連れの人に「この人誰?」「え!なにこれ?」と聴きまくってた方が・・・。
ある意味、ここまで来ると貴重な体験になりますが・・・。

■春日さんのHPはこちら↓
http://rik.fool.jp/jf/

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